景気・経済の循環に合わせて投資対象を決めていく手法をセクターローテーション投資と言います。
株式投資では、景気循環の特定の段階において、特定のセクターが他のセクターよりも優れたパフォーマンスを発揮することが知られています。
セクターローテーションは正しく使えると、今高いパフォーマンスが期待できるセクターや次に高いパフォーマンスが期待できるセクターを見つける手掛かりになります。
また今は相対的に安く見積もられている優良なバリュー株を見つけるのにも役立ちます。
セクターローテーションを正しく使うためには、景気サイクルと市場サイクルを分けて考えなければなりません。
この記事を読んだすべての人が、セクターローテーションを上手に活用し、株式投資に役立てられることを願っています。
【景気サイクルと市場サイクルについて】
景気サイクルとは、経済の循環のことです。経済は好況期と不況期を交互に繰り返しながら成長していきます。そのため景気サイクルは経済指標を反映して波を作っています。
市場サイクルとは、株式市場の動向のことです。株式市場の値動きは投資家の心理によって揺れ動きます。そのため市場サイクルは投資家心理を反映して波を作っています。
ここでの注意点は、市場サイクルは景気サイクルよりも3~6ヵ月早く動くということです。
株式市場には先見性があり、株価は将来の材料を先取りし、株価に織り込みながら推移していきます。
そのため、セクターローテーションを活用して投資対象を選定する時は、景気の状況と市場の状況は分けて考え、セクターの選定をしなければなりません。
サークル型のセクターローテーションについて知りたい方はこちらのリンクからどうぞ。
【景気サイクルについて詳しく解説】
景気・経済は合理的に予測可能なサイクルで動いています。
景気サイクルは4つのステージに分かれています
「完全な景気後退|Full Recession」「早期回復|Early Recovery」「完全な回復|Full Recovery」「早期景気後退|Early Recession」です。
それぞれの景気の特徴と高いパフォーマンスが期待できるセクターを紹介していきます。
【完全な景気後退|Full Recession】
Full Recessionは不況期から景気回復期にあたる局面です。
Full Recessionでは雇用者数は減少し、失業者数は増加します。
国内総生産(GDP)は前四半期比で後退します。消費者マインドは底打ちしている状態です。
インフレが鎮静化してきたため、FRBは景気回復へシフトしていくために政策金利を引き下げていきます。
そしてイールドカーブは正常化していきます。
【早期回復|Early Recovery】
Early Recoveryは景気回復期から景気好況期にあたる局面です。
Early Recoveryでは雇用者数や失業率が改善していき、消費者マインドの期待が高まっている状態です。
景気が好調になっていくため鉱工業生産は増加していきます。
政策金利の利下げにより短期金利は低くなっている一方、将来の景気好調が期待され長期金利は高くなっていきます。
そのためイールドカーブはスティーブ化(上昇)し始めていきます。
【完全な回復|Full Recovery】
FullRecaveryは景気好況期から景気後退期にあたる局面です。
Full Recoveryでは消費者マインドは低下し始め、鉱工業生産は横ばいとなっていきます。
この時期にはインフレが進行し始め、金利が急速に上昇していきます。
【早期景気後退|Early Recession】
Early Recessionは景気後退期から不況期にあたる局面です。
Early Recessionでは消費者マインドは最悪の状態となり、鉱工業生産性は減少していきます。
この時期では高インフレに悩まされ、景気の過剰な過熱感を抑えようと政策金利は最高水準に達します。
そのため長短金利差が縮まりイールドカーブはフラット化、あるいは長短金利が逆転し逆イールドカーブとなってしまいます。
【市場サイクルについて詳しく解説】
市場サイクルは株式市場の動向のことで、投資家心理を反映しています。
株式市場には先見性があるため、市場サイクルは景気サイクルよりも3~6ヵ月早く動きます。
市場サイクルは4つのステージに分かれています
「相場の底|Market Bottom」「強気相場|Bull Market」「相場の天井|Market Top」「弱気相場|Bear Market」です。
それぞれの局面での特徴と、回転先で高いパフォーマンスが期待できるセクターを紹介していきます。
【相場の底|Market Bottom】
Market Bottomでは、株価は長期的な安値となっています。
劣悪な経済背景が株式相場全体を押し下げています。
投資家はディフェンシブセクターから景気に敏感なセクターにシフトする準備をしています。
【強気相場|Bull Market】
Bull Marketでは、株価は安値から反発していきます。
株式市場は最悪期を脱し、経済活動が回復するにつれて景気循環株も株価が回復していきます。
【相場の天井|Market Top】
Market Topでは、株価は長期的な高値となっています。
経済成長が過熱し過ぎていき、高インフレに伴って金利が上昇していく局面です。投資家はディフェンシブセクターへの転換を準備しています。
【弱気相場|Bear Market】
Bear Marketでは、株価は高値から下落していきます。
株式市場は高値から離れ始め、経済活動が減速していく局面です。投資家の売り活動が活発になることで株式市場の下落が加速していきます。
【セクターローテーションは今どこ?|2023年12月】
私の考察では、2023年12月のセクターローテーションでは、景気サイクルは「完全な景気後退|Full Recession」の入り口。市場サイクルは「相場の底|Market Bottom」の出口だと考えられます。
2022年6月にインフレはピーク(CPI:9.1)を迎え、2023年11月にはCPI:3.2と高インフレ状態から脱してきています。
FRBの政策金利は2023年11月時点で5.5であり、2会合連続利上げ見送りとなっていることから、利上げの打ち止め観測が出ています。
しかしイールドカーブはまだ逆イールド状態であり、雇用の面では失業率はまだ上昇していないため、景気サイクルはFull Recessionの入り口であると考えられます。
現在景気・経済は急ピッチな政策金利の引き上げにより経済は縮小傾向であり、着実にリセッションに向かっています。
今後は景気が大きく後退しないよう、FRBは政策金利を2024年中に引き下げていくと市場は予測しています(CMEのFedWatch ツールより)。
金利と株価は逆相関の関係にあります。投資家は今後の金利引き下げを織り込み始め、景気に敏感な指数であるNASDAQは年初来高値付近まで株価上昇しています。
そのため市場サイクルはMarket Bottom の出口であると考えられます。
サークル型のセクターローテーションなら【セクターローテーションは今どこ?】2023年最新版!現在有利なセクターはここ!を参照して下さい。
【セクターローテーションを活用したポートフォリオの作り方】
セクターローテーションはすべての投資家に有用な指標です。
短期投資をメインに行っている方であれば、今高いパフォーマンスが期待できるセクターや次に高いパフォーマンスが期待できるセクターを見つける手掛かりになります。
長期投資をメインに行っている方であれば、今は相対的に安く見積もられている優良なバリュー株を見つけることができます。
セクターローテーションを活用したポートフォリオの作り方はこちらの記事を参照下さい。
セクターローテーションを正しく理解して、上手に株式投資に活かしていきましょう。
【まとめ】
景気サイクルと市場サイクルをみることで、セクターローテーションを理解しやすくなります。
経済指標を見ることで景気サイクルの現在地がわかり、株価動向から投資家心理を読み解くことで市場サイクルの現在地がわかります。
景気サイクルと市場サイクルがわかれば、セクターローテーションを活用することで、高いパフォーマンスが期待できるセクターを予測することができます。
セクターローテーションを学ぶことで、「1%でも勝率の高いトレード」「お得なトレード」を心がけていきましょう。